「イオン膜の塩」という言葉を耳にしたことはありますか?
「人工的につくられた塩」と聞くと、体に悪そうだと感じてしまう人も少なくありません。
実際、スーパーで売られている多くの塩は、このイオン膜という仕組みを使って作られています。
けれども、自然の海水からできる「自然塩」とはどんな違いがあるのでしょうか。
また、健康への影響は本当に心配しなければならないのでしょうか。
まさに「チリも積もれば山となる」。
毎日口にする食品だからこそ、その体への影響はとても大きいのです。
今回は、「イオン膜の塩」の特徴や自然塩との違い、そして体への影響について、わかりやすく解説していきます。
この記事でわかること! |
・イオン膜の塩とは? ・自然の塩とイオン膜の塩の違い ・イオン膜の塩の利点 ・イオン膜の塩は体に悪い? |
イオン膜の塩って何?
「イオン膜の塩」
「塩を作る」にはどうすればよいのでしょうか。
海から汲んできた水をお日様に当てると水か蒸発して塩が残るというお話を聞いたことがあるかもしれません。
これは普通の塩(自然塩)の作り方です。
今回ご紹介する「イオン膜の塩」は、自然塩とは作り方が違います。
「イオン膜」を通して、ナトリウム(Na⁺)と塩素(Cl⁻)だけを取り出して結晶にしたら塩ができるのです。

・海水をそのまま濃くしたり、蒸発させて固める
→普通の塩(自然塩)
・イオン膜を通して、Na⁺とCl⁻だけを取り出して結晶にする
→これが、イオン膜の塩(精製塩)
「イオン膜」とは

「イオン膜」?なにそれ??

イオンだけを選んで通す特別なフィルターのことだよ!
しかも、「+のイオンだけ通す膜(陽イオン交換膜)」と「−のイオンだけ通す膜(陰イオン交換膜)」があって、水や大きな分子は通さないんだ。
海水から塩を作るとき、イオン膜を使ってNa⁺とCl⁻を分けて、純度の高い塩を作れるるんだよ。
物質が「+の電気を持つ粒(陽イオン)」や「−の電気を持つ粒(陰イオン)」に分かれた状態を「イオン」と呼びます。
たとえば食塩(NaCl)は、水にとけると、
[Na⁺(ナトリウムイオン)と Cl⁻(塩化物イオン)]
に分かれます。
膜(まく)は、あるものだけ通して、ほかは通さないフィルターのようなもの。
たとえば「ざる」は水は通すけど米粒は通さない、みたいな感じです。
イオン膜とは、イオンだけを選んで通す特別なフィルター。
しかも「+のイオンだけ通す膜(陽イオン交換膜)」と「−のイオンだけ通す膜(陰イオン交換膜)」があります。水や大きな分子は通しません。
これを使うと、海水から塩を作るときにNa⁺とCl⁻を分け、純度の高い塩を作れます。

??
難しくなってきたぞ・・・

例えば、建物の入り口にゲートを設置するとするよね。
・+のイオン専用ゲート→ 子どもしか入れません!みたいに「+だけOK」
・−のイオン専用ゲート → 大人しか入れません!みたいに「−だけOK」
イオン膜はそんなふうに、イオンの種類で「通す/通さない」を決められるんだよ。
イオン膜とは、イオン専用のフィルターです。
+だけ、−だけ、と「選んで通す」ことができる膜なのです。
参考URL:塩百科
安くて品質が一定のイオン膜の塩
味の違い

普通の塩とイオン膜の塩で2種類の野菜スープを作ってみたよ。
夕食に食べ比べてみよう!
普通の塩(自然塩・天日塩など) | イオン膜の塩(精製塩) |
・しょっぱいだけじゃなくて「まろやか」 ・少し甘みや苦み、深いコクを感じる ・料理のうま味を引き立てやすい |
・とても「シャープなしょっぱさ」 ・味に広がりが少なく、シンプル ・料理によっては「しょっぱいだけ」に感じることもある |
例えると・・・
・自然塩 → 「具だくさんのスープ」
(しょっぱさに加えてコクや旨みがある)
・イオン膜の塩 → 「だしを取っていない味噌汁」
(シンプルに塩味はあるけど深みが少ない)
味の特徴としては、以下のようになります。
プロの料理人やパン職人はこれらの違いを生かして「料理に合わせて塩を使い分ける」ことも多いのです。
・普通の塩(自然塩):まろやかで複雑な味、料理の味を引き立てやすい
・イオン膜の塩(精製塩):純粋でストレートなしょっぱさ、安定した味
イオン膜の塩の特徴
・とても純度が高い
ナトリウム(Na⁺)と塩素(Cl⁻)だけを取り出して作るから、余計なものがほとんど入らない。
・大量に作れる
イオン交換膜を使う方法は「電気」を利用して効率的に作れる。
天日干しや釜で煮つめるより早いので、大量生産ができる。
・安定した品質
自然まかせ(天日や火加減)ではなく、機械でコントロールできる。
だから、どの時期に作っても同じしょっぱさ・同じ品質の塩になる。
・コストが安い
工場で効率よく作れるので、値段が安い。

イオン膜の塩は、
「安く、大量に、いつでも同じ品質で作れる」
から重宝されるね。

ただし、イオン膜の塩は工場で作られるから、自然な塩に含めれているミネラルも取り除かれちゃうんだって。
海から水を汲み取って天日干しすると時間がかかります。
大量の水を使っても残る塩はわずか。
不純物が混ざっていたり日によって味が変わってしまう場合もあります。
一方で、イオン膜の塩は、工場で効率的に大量生産できるため、
「安く、大量に、いつでも同じ品質で作れる」
というのが大きなメリットです。
・イオン膜の塩=工業向け・安定した品質
・天日塩や自然塩=自然のミネラル入り・風味が豊か
といった特徴になります。
イオン膜の塩は体に悪い?
シンプルなしょっぱさは摂りすぎ注意
ここまでで「安くて品質が安定してるからイオン膜の塩ってすっごくいい!」と思われたかもしれません。
あるいは、「工場で作っているのだから、なんか心配・・・」という声もありそうです。
ほとんどの物事にはメリット・デメリットがありますね。
イオン膜の塩も例外ではありません。

製品として販売されているし、便利だからイオン膜の塩そのものは悪者ではなさそうだけど・・・

そうだね!
イオン膜で作った塩は、ナトリウム(Na⁺)と塩素(Cl⁻)がほぼ100%の純粋な食塩だから、不純物が少なく、安全で衛生的。
一概に「体に悪い」とは言えないんだよね。

ただし、取りすぎると問題なんだよね・・・
イオン膜で作った塩(いわゆる「精製塩」)は、ナトリウム(Na⁺)と塩素(Cl⁻)がほぼ100%の、純粋な食塩です。
不純物が少なく、安全で衛生的。だから「体に悪い」とは言えません。
ただし、摂りすぎると問題です。
イオン膜の塩は純粋なので「しょっぱさ」が強く、つい大量に使ってしまいます。そのため、ナトリウムを摂りすぎやすいのです。
ナトリウムを過剰にとると 高血圧・心臓病・腎臓病のリスクが高まります。
これはイオン膜の塩に限らず、どんな塩でも共通の注意点ですが、イオン膜の塩にその傾向が強いのです。
イオン膜の塩の栄養素
さらに栄養素の問題もあります。
天日塩や自然海塩は、マグネシウム・カリウム・カルシウムなどのミネラルを含みます。
これらは味をまろやかにしたり、体のバランスを整える助けにもなります。
一方、イオン膜の塩はそれらのミネラルがほとんどなく、純粋に「ナトリウムの塩」。
自然の塩と比べると含まれる栄養素が少ないのです。
・イオン膜の塩=「シンプルで便利」 ・自然塩=「ミネラルもある」 ・どちらも「取りすぎれば同じように健康に悪い」 |

そうか・・・
イオン膜の塩は安くて便利だけれど、栄養素が少なかったり使いすぎて病気につながったりするかもしれないんだね。
イオン膜の塩=体に悪いわけではない(安全で清潔)。
でも、ナトリウムを取りすぎると健康に悪い → これはどんな塩でも同じです。
ミネラルも摂りたい人は、自然塩やミネラル豊富な塩をうまく取り入れることをおすすめします。
「イオン膜の塩は体に悪い」というより、シンプルすぎてバランスが一方向になりやすいと考えれば分かりやすいですね。
参考URL:新谷酵素
イオン膜を使った塩と天然塩のミネラル成分はどれほど違うのか?
ミネラル成分の比較
「イオン膜を使った塩(精製塩)」と「天然塩(自然塩)」では、含まれるミネラル成分に大きな違いがあります。
以下の表に、代表的な製品のミネラル含有量を示します。(いずれも100g中に含有する成分)
種類 | 商品 | 塩化ナトリウム | カルシウム | マグネシウム | カリウム |
日本海水塩の里 (精製塩) |
![]() |
99.5g | 約0.8mg | 85mg | 測定下限 未満 |
海の精 あらしお (天然塩) |
![]() |
86.4g | 400mg | 700mg | 240mg |
・海の精あらしおは天然海塩で、マグネシウム・カルシウム・カリウムなどのミネラルが豊富に含まれています。 ・日本海水塩の里などの精製塩は塩化ナトリウムの含有量が高く、その他ミネラルはほぼ除かれているため、成分のバランスや種類に大きな違いがあります。 |
精製塩は製造工程でミネラル成分がほとんど除去されるため、ナトリウムが主成分となります。一方、天然塩は自然の海水や岩塩から得られるため、ナトリウム以外のミネラルも多く含まれています。
この比較から、精製塩はほとんどがナトリウムで構成されており、他のミネラル成分は非常に少ないことがわかります。一方、天然塩はナトリウム以外のミネラル成分も豊富に含まれており、味わいや栄養価に違いが生じます。
まとめ
・海水をそのまま濃くしたり、蒸発させて固める
→ 普通の塩(自然塩)
・イオン膜を通して、Na⁺とCl⁻だけを取り出して結晶にする
→ イオン膜の塩(精製塩)
イオン膜の塩は「安く、大量に、いつでも同じ品質で作れる」という大きなメリットがあります。
一方で、味はシャープでシンプルなしょっぱさのため、つい取りすぎてしまう傾向があります。
塩分を摂りすぎると、高血圧・心臓病・腎臓病などのリスクが高まります。
さらに、イオン膜の塩はミネラルがほとんどカットされているため、自然塩と比べると栄養価が低いという特徴もあります。
塩分は人間の体に欠かせない栄養素ですが、摂りすぎには注意が必要です。
便利な「イオン膜の塩」ですが、コクのある味わいや健康を意識する方は、自然塩を選んだり、自然塩とイオン膜の塩を上手に使い分けたりするのがおすすめです。
参考URL:イオン交換膜製塩法の塩に関する報道を検証