切る手間がかからず手軽に使える「カット野菜」。忙しい私たちにとって、生食用から炒め物用まで、用途に合わせた様々な種類があるカット野菜は本当にありがたい存在ですよね。
でも、ふとスーパーやコンビニの冷蔵ケースの前で立ち止まったとき、こんな声が頭をよぎりませんか?
「カット野菜って、薬品で洗っているから体に悪いって聞くけど…」
「栄養が全部流れちゃって、食べても意味がないんじゃないの?」
実は私も、以前は同じ不安を感じていました。 せっかく健康のために野菜を摂るのに、それが逆に健康を害する原因になっては本末反転ですよね。
この記事では、私が個人的に情報収集した結果と、公的な情報源や専門的なデータを元に、カット野菜の「安全性」と「栄養価」のリアルな真実について考えていきたいと思います。
なぜカット野菜は「体に悪い」と言われるか?3つのポイント
切る手間がかからず手軽に使える「カット野菜」

利用したことのある方も多いのではないでしょうか? 生食用から炒め物用と、用途に合わせた様々な種類のものが販売されています。
便利な「カット野菜」ですが、みなさんはどのようなイメージをもっていますか?



カット野菜の製造工程
カット野菜の製造の基本的な流れはこのようになっています。
入荷後検品を行い、外葉・皮・芯などを取り除きます。ここで粗くカットをする場合もあります。
洗浄をしたのち、商品のかたちにカットします。
その後、洗浄(繰り返しすることも)~脱水を行ったのち計量して包装・出荷されます。
ハイターと同じ成分?次亜塩素酸ナトリウムによる洗浄

カット野菜の洗浄・殺菌には、通常「次亜塩素酸ナトリウム」が使用されています。
収穫した野菜には、有害な微生物に汚染された土や虫がついている可能性があります。
次亜塩素酸ナトリウムを使用する目的は、これらを除去して食中毒を防止することまた雑菌の繁殖を防ぐことです。
この次亜塩素酸ナトリウムは、国が認めている食品添加物の一つでもあります。
食品を安全に保つために、食品に直接触れる部分や器具などを消毒する際に使われているのです。
(注)次亜塩素酸ナトリウムには、食品添加物に指定されていないものもあります。
【効果・効能】
次亜塩素酸ナトリウムには、大腸菌、黄色ブドウ球菌などの一般細菌やウイルスに対し、広く殺菌・消毒・不活化効果があります。
また、一般の消毒薬では効果が弱いノロウイルスにも有効です
次亜塩素酸ナトリウムとは?
カット野菜が危険だと言われる一番の要因がこの「次亜塩素酸ナトリウム」の使用です。
パッケージに「表示されない」添加物の存在
カット野菜の袋の裏を見て、「あれ?添加物が少ないな」と感じたことはありませんか?
実は、野菜の切り口の変色を防ぐためのpH調整剤などが使われる場合があります。これらの薬剤は、国のルール上、製造過程で使われても最終製品に残らない、または極めて微量なため「加工助剤」として扱われ、表示義務がない場合があるんです。(引用元:【厚生労働省H.P:食品添加物の表示についてより】)表示がない=何が入っているか分からない、という点が、消費者の大きな不安要素になっているのではないでしょうか。
栄養は水に溶けて「流れ出て」しまう?
カット野菜は、切ってから何度も水洗い・殺菌処理を経るため、「大事な栄養、特に水溶性のビタミンが水に溶けて袋の中に流れちゃってるんじゃないか」という心配もよく聞かれます。
これについてはこの後詳しく説明します。
厚生労働省「大量調理施設衛生管理マニュアル」における次亜塩素酸ナトリウムによる殺菌
厚生労働省が発表している「大量調理施設衛生管理マニュアル」というガイドラインがあります。
これは、飲食店などたくさんの人に食事を提供する場所で、食中毒を防ぐためにどのように衛生管理を行えば良いか、ということが詳しく書かれたものです。
このマニュアルの中では、食材の殺菌について、次亜塩素酸ナトリウムなどの消毒液を使うことが推奨されています。
例えば、野菜や果物などを扱う前に、これらの消毒液につけて殺菌し、その後、流水で十分に洗い流すようにとされています。
次亜塩素酸ナトリウムは通常、水で希釈して使用します。(希釈した物を次亜塩素酸ナトリウム溶液といいます。) では野菜の洗浄・殺菌に使用する「次亜塩素酸ナトリウム溶液」の濃度はどれくらいなのでしょうか?
次亜塩素酸ナトリウムの濃度は、「ppm」(ピーピーエム)という単位で表されます。
「ppm」 とはmg/Lを意味します。
例:200ppm溶液⇒1Lの水に200mgの次亜塩素酸ナトリウムが入っている。
1mg=0.001g、200mg=0.2g
0.02%(200ミリグラムパーリットル)の溶液に5分または0.01%(100ミリグラムパーリットル)の溶液に10分浸水することが望ましいとされています。
そして、最も重要なのが、殺菌処理の後に「飲用適の水で十分な水洗い・すすぎ」が義務づけられている点です。製造工場では、このすすぎ洗いによって薬剤をほぼ除去し、残留が極めて低い状態でパック詰めされていると思われます。
公的なデータでも、処理後の野菜に残留する塩素は日本の水道水の残留塩素よりも低いレベルになるよう管理されている場合が多いようです。
結論として、カット野菜の殺菌処理は、食中毒リスクを回避し、私たちが安心して食べられるようにするための「衛生管理上の安全措置」であり、過度に恐れる必要はない、と私は考えています。
次亜塩素酸ナトリウム溶液で栄養は抜けるって本当?
次に、栄養が失われているという問題についてです。これは半分正解で、半分誤解だというのが私の個人的な考察です。
カット・洗浄の過程で、水溶性の栄養素(ビタミン類)は溶け出してしまいます。
しかしすべてなくなるわけではありません。次亜塩素酸ナトリウムで洗浄・殺菌する場合、塩素臭さを残さないためしっかりと洗浄が行われます。
よって多くの栄養が溶け出してしまう可能性があります。 ベストセラーとなった『食品の裏側』著者の安部司氏は、次亜塩素酸ナトリウムが水の中の塩素と反応して、野菜のビタミンが壊れると警告しています。
しかし、これはカット野菜特有の問題ではありません。私たちが家で生野菜を調理する際も、水にさらしたり、茹でたりすれば、同じように水溶性ビタミンは水に流れ出てしまいます。
食物繊維、ミネラル、そして脂溶性ビタミン(にんじんに含まれるベータカロテンなど)は、ほとんど失われずに保持されます。
私は「完璧な栄養素」を求めることよりも、「継続して野菜を摂ること」の方が、圧倒的に健康への貢献度が高いと考えています。厚生労働省が推奨する野菜の摂取目標(1日350g)をクリアするのはなかなか大変ですが、カット野菜は調理のハードルを下げ、「今日は忙しいから野菜は無理」という日をゼロにするためにあってもいいのかなと思います。
袋を開けたときの独特のにおいはなぜ?
しっかり洗浄しても、消毒剤のにおいが残っている可能性はあります。
また、カットして袋詰めされた野菜も呼吸をしているため、蒸れたようなにおいが薬剤のにおいに感じられるという説もあります。
カット野菜をより安心・安全に食べるための工夫
不安を最小限にし、私たちができる工夫をかんがえてみます。
気になるなら「サッと水洗い」
殺菌剤の匂いや残留が気になる方は、食べる直前にボウルでさっと水洗いしてみてください。ほとんど残留していないとはいえ、気分的な安心感は得られるかもしれません。
加熱調理前提で使う
気になる方は野菜炒め用などのパックを買うといいです。加熱することで、菌のリスクはさらにゼロに近づき、安心感できます。
「次亜塩素酸ナトリウム不使用」のカット野菜商品も知っておく
一般的なレトルト食品などと比べると価格は高めかもしれませんが、Oisix(オイシックス)などの食材宅配サービスでは、次亜塩素酸ナトリウム不使用のカット野菜も取り扱っています。気になる方は、こうした安全にこだわった商品を選ぶことも可能です。
次亜塩素酸ナトリウムは国が認めていても安全とは限らない?

次亜塩素酸ナトリウムは、消毒薬のなかでは残留性が低く安全性が高いとされています。
国の定めた基準値以下で使用すれば、体内に入っても問題ないと言われています。
しかし次亜塩素酸ナトリウムに含まれる物質には、胃腸や肝臓に負担をかけたり、喘息やアレルギー症状などを引き起こす可能性が指摘されています。
漂白剤の中には、非常に強い毒性を持っており、法律で取り扱いが厳しく制限されているものもあります。これらの漂白剤は、劇物に指定されている場合があります。
漂白剤を使った食品を洗ったり、漂白したりする場合、最終的には食品に漂白剤が残らないようにすることが理想です。しかし、ごく微量の漂白剤が残ってしまう可能性もゼロではありません。
問題なのは、この微量に残ってしまった漂白剤が、私たちの体にどのような影響を与えるのか、まだ十分に解明されていないということです。
つまり、たとえ微量であっても、人体に悪影響を及ぼす可能性があるということです。

国が認めていても安全とは限らないんだね
パッケージに表示の義務がない添加物について
加工助剤、キャリーオーバー又は栄養強化の目的で使用されるものについては、食
品添加物の表示を省略することができます。
引用元:基本的な表示事項
加工助剤とは
定義)食品の加工の際に使用されるが、(1)完成前に除去されるもの、(2)その食品に通常含まれる成分に変えられ、その量を明らかに増加されるものではないもの、(3)食品に含まれる量が少なく、その成分による影響を食品に及ぼさないもの
厚生労働省:食品添加物の表示について【厚生労働省H.P:食品添加物の表示についてより】
次亜塩素酸ナトリウムは加工助剤に分類されるため、表示の義務はありません。

原材料に添加物が記載されていないからといって安心はできないんだね。

次亜塩素酸ナトリウム以外にも、表示の義務のない添加物はあるのかな?
- 洗浄剤
- シャキシャキ剤
- 変色防止剤 など

カット野菜が長く変色しないのも添加物の影響なんだね。

次亜塩素酸ナトリウム不使用のカット野菜を使っている食材宅配サービス
カット野菜に関するQ&A
セブン-イレブンとローソンのカット野菜は、次亜塩素酸ナトリウムで消毒しているのでしょうか?
おそらく、衛生管理の工程で使われている可能性が高いと思います。ただし、それは「安全のため」の必須工程です。
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食品衛生法に基づく標準的な手法なんです
カット野菜のように、切断され、洗わずにそのまま食べられることを前提とする食品は、製造過程で食中毒菌が繁殖しないよう、徹底した殺菌処理が義務付けられています。
次亜塩素酸ナトリウムは、国が認めた食品添加物(殺菌料)の一つで、「大量調理施設衛生管理マニュアル」などでも、食材の殺菌に推奨されている標準的な手法なんですよ。
セブンやローソンのような大手コンビニのサプライヤーも、この国の基準に則って衛生管理を行っている可能性が高いです。
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安全性は「濃度」と「水洗い」で管理されている
家庭用漂白剤と同じ成分、という事実は不安になりますが、食品に使われる際は非常に薄い濃度で使われています。
そして最も重要なのが、殺菌処理の後に「飲用適の水で十分な水洗い・すすぎ」が義務づけられている点です。製造工場では、このすすぎ洗いによって薬剤をほぼ除去し、残留が極めて低い状態でパック詰めされていると思われます。
公的なデータなどからも、最終製品に残る塩素は日本の水道水の残留塩素よりも低いレベルになるよう管理されている場合が多いとされており、過度に残留を心配する必要はないのかもしれません。
「なぜ企業は『不使用』を前面に出さないのか?」
もし本当に使っていないなら、セブンやローソンは「次亜塩素酸ナトリウム不使用!」と大きく宣伝するはずだと思いませんか?
しかし、多くのコンビニはそれをしません。なぜか?
殺菌処理を行わない、あるいは次亜塩素酸ナトリウム以外の高コストな方法は、食中毒のリスクを高めるか、商品の価格を大幅に上げることに繋がります。
厳しい衛生管理を行う中で、最も効果的でコスト効率の良い、国が認めた方法を採用している、という「衛生管理のプロとしての責任」を優先している可能性があるのではないでしょうか。
私は、「安全のために適切な薬剤を使い、その後に徹底的に洗い流す」という姿勢は、企業が私たち消費者に提供できる最高の信頼性の一つだと考えています。
もし使用を否定しなかったとしても、それは「国のルールに則り、最も安全な方法で管理しています」というメッセージだと受け取って良いのではないでしょうか。
最後に
- 次亜塩素酸ナトリウムは国が認めている食品添加物で、人体に影響はないとされている。
- 次亜塩素酸ナトリウムは加工助剤のため、パッケージに記載する義務はない。
国の認めている範囲内であれば大丈夫とのことですが、添加物が使用されていることに変わりはありません。
気にする方はなるべく控えたほうがよさそうですね。

