健康診断で塩分を控えるように言われた、将来の健康のために意識的に減塩したい…そう考えている方にとって、「減塩醤油」は非常に魅力的な選択肢として目に映りますよね。
「いつものお醤油をこれに変えるだけで、手軽に減塩できるなんて便利そう!」と、購入を検討されている方も多いのではないでしょうか。
普通の醤油よりも塩分が少ないというのは嬉しいけれど、「減塩」と聞くと、かえって「体に良くない成分が含まれている可能性はないのかな?」と、不安を感じることはありませんか?
健康のために選ぶものだからこそ、デメリットや注意点もきちんと知っておきたいですよね
減塩醤油は、食塩の摂取量を減らすための有効なツールとなり得ますが、実は知っておきたい「意外な落とし穴」も潜んでいます。
この記事では、減塩醤油が「体に悪い」と言われるのはなぜなのか、そのデメリットに焦点を当てて分かりやすく解説します。
減塩醤油が「減塩」できる理由
まず、減塩醤油がなぜ塩分(塩化ナトリウム)を少なくできるのか、その仕組みを簡単に見てみましょう。
一般的に、減塩醤油は普通のお醤油に比べて塩分量を25%から50%ほどカットしています。単に塩分を減らすだけでは味が物足りなくなってしまうので、そこで登場するのが「塩化カリウム」という成分です。
塩化カリウムには塩化ナトリウムと似たような塩味があり、これを使うことで塩分を減らしても味の物足りなさを感じにくくしているのです。
つまり、塩味そのものは保ちつつ、体に摂りすぎることで良くないとされる塩化ナトリウムの量を減らしている、というわけです。
「減塩醤油」の落とし穴
脱脂加工大豆
本来の醤油は大豆を丸ごと使用しますが、一般的な減塩醤油の原料には「脱脂加工大豆」が含まれていることがあります。
これは、大豆から油を搾り取った後に残ったもので、主に化学溶剤(ノルマルヘキサンなど)を使って油を抽出しているのが一般的です。
さらに、この脱脂加工大豆には、遺伝子組み換えされた大豆が使われている可能性も否定できません。
遺伝子組み換え作物については、アレルギー反応や長期的な健康への影響を懸念する声もあり、できるだけ避けたいと考える方も多くいらっしゃいます。
本来、醤油はシンプルに大豆、小麦、食塩の3つの材料と微生物の力で作られる、非常にシンプルな調味料です。
それと比べると、減塩醤油には減塩を実現するために、様々な添加物や製造工程を経た原料が使われる傾向があることを理解しておくことが大切です。
マグネシウム不足が高血圧の原因になる
「塩分を控える」という意識はとても大切ですが、健康的な血圧を維持するためには、もう一つ、見落としがちな非常に重要なポイントがあるのです。
それは、ミネラルバランス、特に「マグネシウム」というミネラルです。
マグネシウムが血圧と深く関わっていることをご存知ですか?
もし「ただ減塩すればいいんでしょ?」と考えていたとしたら、少し立ち止まってこの記事を読んでみてください。減塩の際に知っておきたい大切な真実を、マグネシウムに焦点を当ててお伝えします。
血圧管理は「塩分を減らす」だけでは足りない?マグネシウムの意外な役割
高血圧予防のために塩分摂取量を減らすことが推奨されているのは、塩分(ナトリウム)が体内の水分バランスに影響を与え、血管に負担をかける可能性があるからです。
だからこそ、減塩醤油のような商品が注目されるわけですね。
しかし、私たちの体の血圧を調整する仕組みは、塩分(ナトリウム)だけでなく、さまざまなミネラルが複雑に関わり合って機能しています。
その中でも、マグネシウムは血圧にとって非常に重要な役割を担っています。
マグネシウムは、血管の細胞の中へのカルシウムの出入りを調整する働きがあります。カルシウムが細胞内に過剰に入り込むと血管は収縮しやすくなるのですが、マグネシウムが適切に存在することで、この収縮を抑え、血管をしなやかに保つ手助けをしてくれるのです。
さらに、マグネシウムは自律神経のバランスを整えることにも関与しています。
ストレスなどで交感神経が優位になりすぎると血管がキュッと縮こまり血圧が上がりやすくなりますが、マグネシウムがその過剰な働きを抑えることで、血管をリラックスさせて血圧を下げる方向に導いてくれる効果も期待できるのです。
塩を控えすぎるとミネラル不足になる
ご存知の通り、塩分の摂りすぎは高血圧をはじめとする様々な健康問題のリスクを高めます。だからこそ、減塩を意識することは非常に大切です。
しかし一方で、極端に塩分を控えすぎると、体に必要なミネラルまで不足してしまう可能性もあります。
ミネラルは、私たちの体の様々な機能がスムーズに働くために欠かせない「エンジンオイル」のような存在。それが不足すると、体の調子が悪くなってしまうこともあり得ます。
つまり、塩分は「摂りすぎず、でも控えすぎず」というバランスが重要なのです。そして、このバランスを考えたときに、毎日のように使う醤油を「減塩」タイプに変えるというのは、多くの方がまず考えるアプローチですよね。
しかし、問題はその「減塩」がどのようにして実現されているか、という点にあるのです。
さっきも書いたように減塩醬油は、減らした塩化ナトリウムの代わりに塩化カリウムを添加しているのでしたね。
「減塩」の裏にあるカリウム過剰摂取のワナ
減塩醤油の塩分量を減らすために、多くの製品では塩化ナトリウムの一部を「塩化カリウム」という別の成分に置き換えて塩味を補っています。これにより塩分(ナトリウム)は減るのですが、その代わりにカリウムの含有量が多くなっていることがあります。
カリウムは体内の余分なナトリウムを排出するのを助け、血圧を下げる効果も期待できるため、一般的には積極的に摂りたいミネラルです。
しかし、注意が必要なのは、腎臓の機能が低下している方や透析を受けている方です。
これらの病気がある場合、体内のカリウムをうまく排出することが難しくなり、血液中のカリウム濃度が高くなりすぎてしまう「高カリウム血症」になるリスクがあります。
高カリウム血症は、不整脈を引き起こしたり、場合によっては心停止につながることもある非常に危険な状態です。
「減塩だから」と安易に減塩醤油を使いすぎると、意図せずカリウムを過剰に摂取してしまう危険性があることを、特に腎臓に持病がある方は必ず覚えておいてください。
ご自身の健康状態に合わせて、カリウムの摂取量を適切に管理することが極めて重要になります。
減塩醤油、カリウム量もチェックしていますか?
減塩醤油を選ぶ際には、塩分量だけでなく、カリウムの含有量にも注目してみましょう。例えば、一般的な濃口醤油と減塩醤油、そして「超減塩」タイプの製品に含まれる塩分とカリウムの量を比較したデータを見てみると、その違いがよく分かります。
(注:食塩相当量は100gあたり。カリウムは商品によって測定値が異なる場合や、そもそも測定・記載がない場合もあります。上記は例として参考にしてください。)
この表を見ると、減塩タイプの多くは確かに食塩相当量が減っていますが、特に「超減塩」を謳っている製品の中には、カリウム量が一般的な濃口醤油よりも多くなっているものもあることが分かります。
これは、減塩するために多くのカリウム塩が使われているためです。「減塩」という表示だけを見て安心せず、裏面の成分表示なども確認し、塩分と合わせてカリウムの含有量にも目を向ける習慣をつけましょう。
減塩醤油に含まれる添加物が多い
減塩にすると、風味が物足りなくなったり、保存性が落ちやすくなったりすることがあります。
減塩醤油では、減塩によって失われがちな風味や保存性を補うために、様々なものが加えられる傾向にあるのです。これが、あなたが減塩醤油の原材料表示を見て「色々入ってるな…」と感じる理由であり、知っておきたい「落とし穴」となり得ます。
では、具体的に減塩醤油にはどのようなものが含まれていることが多く、なぜそれが懸念されるのでしょうか?いくつか代表的な成分を見ていきましょう。
風味を調整したり、保存性を高めたりするために、いくつかの食品添加物が使われることがあります。例えば、アルコールはカビの発生を抑える保存料として使われることが多く、比較的リスクは低いとされていますが、気になる方もいらっしゃるでしょう。
また、栄養強化や日持ち向上のためにビタミンB1が添加されることがありますが、中には安全性が完全に確立されていない形のものが含まれている可能性も指摘されています。
さらに、酸味料は食品に酸味を加えて味を調える目的で使われますが、「酸味料」と一括表示されることが多く、具体的な成分が分かりにくいため、複数の酸味料を組み合わせた場合の影響が不明瞭であるという懸念があります。
これらの添加物を継続的に摂取することが、私たちの腸内環境の乱れにつながり、それが体調不良やアレルギー症状を引き起こす原因の一つになる可能性も考えられています。
塩分過剰摂取
減塩醤油の一番の目的は、当然ながら塩分(ナトリウム)の摂取量を減らすことです。「減塩だから大丈夫!」と、ついつい使う量が増えてしまっていませんか?ここに、最初の落とし穴があります。
たとえ減塩タイプであっても、醤油にはやはり塩分が含まれています。もし「減塩だから多めに使っても平気だろう」と考えてしまうと、結果的に通常の醤油を使っていた時と変わらない、あるいはそれ以上の塩分(ナトリウム)を摂取してしまう可能性があるのです。
塩分の摂りすぎは、ご存知の通り高血圧の大きな原因の一つです。体内のナトリウムが増えすぎると血管が収縮しやすくなり、さらに血圧を上げてしまう可能性があります。
特に腎臓の機能が低下している方にとっては、ナトリウムをうまく排出できないため、血圧上昇だけでなく、むくみが出たり、腎臓への負担が増えたりするリスクが高まります。減塩醤油を使う上でも、「適量」を心がけることが非常に大切なのです。
「減塩」にとらわれるな!体に溜まった塩分を「排出」することの重要性
私たちが食事から摂る塩分の主な成分は「ナトリウム」です。このナトリウムは、体の水分バランスを調整したり、神経や筋肉の働きに関わったりと、生命維持に欠かせないミネラルですが、摂りすぎてしまうと体に余分な水分を溜め込みやすくなり、むくみの原因になったり、血圧の上昇につながったりすることが知られています。
減塩は、これから体に取り込む塩分の量をコントロールする上で非常に重要です。
しかし、すでに体内に取り込まれている、あるいは日々少しずつ蓄積されていく可能性のある余分な塩分を、スムーズに体外へ排出することも同じくらい大切なのです。体内の塩分を適切に排出する力も高めることで、体全体のナトリウムバランスを整えやすくなります。
体内の余分な塩分を「排出」するメカニズムと、それを助ける栄養素
体内の余分なナトリウムは、主に腎臓の働きによって尿として体外へ排出されます。この「排塩」のプロセスをスムーズに進めるためには、いくつかの特定の栄養素が重要な役割を果たします。
特に注目したいのが、「カリウム」というミネラルです。カリウムには、体内のナトリウムを体外へ排出しやすくする働きがあります。
ナトリウムとカリウムは、細胞の内外でバランスを取りながら存在しており、カリウムをしっかり摂ることで、ナトリウムの排出が促されると考えられています。
カリウム以外にも、カルシウムやマグネシウムといったミネラル、そして食物繊維なども、それぞれ異なるメカニズムで血圧の調整を助けたり、腸内環境を整えたりすることで、間接的に体内の塩分バランスをサポートする働きが期待できます。
今日から意識したい!「排塩」を助ける食事のヒントとおすすめ食材
それでは、具体的にどのような食材を意識して食事に取り入れれば、「排塩」をサポートできるのでしょうか。
体内の余分な塩分排出を助ける代表的な栄養素と、それらを豊富に含む身近な食材を以下にご紹介します。これらの食材を上手に日々の献立に取り入れてみましょう。
いかがでしょうか?普段からよく目にする、身近な食材がたくさんありますね。
例えば、サラダにトマトやきゅうり、レタス、アボカドをたっぷり使ったり、お味噌汁にわかめを加えたり、副菜に枝豆のソテーを作ったりするだけでも、知らず知らずのうちに排塩を助ける栄養素を摂取することができます。
減塩醤油で味付けしつつ、これらの食材を組み合わせることで、「減らす」と「出す」の両方からの塩分ケアが可能になります。
味の満足度を下げない!賢い減塩テクニック
では、どうすれば味気なくならずに美味しく減塩できるのでしょうか?ポイントは、塩味以外の「美味しさ」を上手に活用することです。
香辛料を積極的に使う
料理にパンチや風味を加えたいとき、ついお塩や醤油に手が伸びていませんか?
ここでぜひ活用してほしいのが、様々な「香辛料」です。胡椒や七味唐辛子、わさびやからしはもちろん、カレー粉やハーブ(パセリ、バジル、オレガノなど)も素晴らしい減塩の味方です。
これらの香辛料は、塩味とは違う「辛み」や「香り」、そして複雑な「風味」を料理にプラスしてくれます。
私たちは味を舌だけで感じているのではなく、香りや風味も一緒に楽しんでいます。香辛料を上手に使うことで、たとえ塩分が控えめでも、香りが食欲をそそり、味全体に深みが出るため、物足りなさを感じにくくなるのです。いつもより少し多めに、または普段使わない香辛料を試してみてはいかがでしょうか。
香味野菜で風味と香りをプラス
もう一つ、香りの効果を借りられるのが「香味野菜」です。しょうが、にんにく、紫蘇、みょうが、ねぎ、セロリなどがこれにあたります。これらの野菜は、それぞれが持つ独特の強い香りが特徴です。
例えば、炒め物に少量の刻んだにんにくやしょうがを加えるだけで、食欲をそそる香ばしい香りが立ち上り、料理全体の風味が格段にアップします。
薬味としてたっぷりのねぎや紫蘇を添えれば、爽やかな香りがアクセントになり、料理が引き締まります。香味野菜の強い風味は、調味料に頼りすぎなくても料理を美味しく感じさせてくれる効果があります。
ただし、チューブタイプのにんにくやしょうがには塩分が添加されていることがあるので、減塩を徹底したい場合は生のものを使うのがおすすめです。
以下の記事では食塩添加してない無添加のにんにくチューブ、生姜チューブを紹介してます。これらのチューブ商品なら生と同じ扱いで使えますよ。
調理法を工夫して食感や香ばしさを楽しむ
味付けだけでなく、料理の「調理法」を工夫することも減塩に繋がります。例えば、同じ食材でも、煮物にするより焼き物にした方が、素材自体の香ばしさや旨味をより強く感じられます。
焼き物の香ばしい焦げ目や、ソテーした時の香りは、塩分が控えめでも美味しさを感じさせてくれる重要な要素です。
また、料理の組み合わせに「メリハリ」をつけるのも効果的です。
例えば、メインのおかずをしっかり焼いて香ばしさを楽しむ分、副菜は和え物や蒸し物にして薄味に仕上げる、といった具合です。このように、食感や香り、温度に変化をつけることで、味覚全体が刺激され、少ない塩分でも満足感を得やすくなります。
炒め物などに使う油も、風味豊かなオリーブオイルやごま油を選ぶと、香りが食欲をそそり、美味しさをプラスしてくれますよ。
調味料は「かける」より「つける」スタイルに
最後は、最も簡単で効果を実感しやすい方法かもしれません。それは、お刺身や揚げ物などに調味料を使う際に、「ドバっとかける」のではなく、「小皿に入れて都度つける」スタイルに変えることです。
私たちは、一度料理に調味料をかけてしまうと、たとえ味が濃すぎると感じても、もう元には戻せません。そして、ついつい必要以上に多くの調味料を使ってしまいがちです。
「あ、かけすぎちゃった!」という経験、一度はありますよね。調味料を小皿に取り、少しずつ「つけながら」食べることで、自分がどれくらいの量の調味料を使っているかを意識できますし、味の濃さも自分でコントロールしやすくなります。
これだけで、無意識のうちに摂取していた塩分量をぐっと減らすことができるはずです。
まとめ
いかがでしたか?この記事では、健康に良いイメージのある減塩醤油の意外な落とし穴と、減塩生活を送る上で本当に大切なことについて解説しました。特に重要なポイントは以下の3点です。
- 減塩醤油は塩分は減らせるものの、カリウムの過剰摂取リスクや、添加物、遺伝子組み換えの可能性がある脱脂加工大豆の使用など、別の懸念点があることを理解する必要がある。
- 塩分を控えるだけでなく、マグネシウムを意識した食事や、カリウムなどの栄養素を摂って体内の余分な塩分を排出する「排塩」の考え方が大切。
- 香辛料や香味野菜、調理法の工夫、つけながら食べるなどの減塩テクニックで味の満足度を下げずに塩分をコントロールできる
普段使っている醤油の成分表示を確認し、食塩相当量だけでなく、カリウムの含有量や原材料(脱脂加工大豆や添加物の有無など)にも注目してみてくださいね。